故郷の怖さ
少しだけ帰省をしようと決めたのは、
窓を開けて入ってきたものが完全に冬の時だった。
帰省の日程、新幹線の予約、持ち物、東京を離れている間の仕事、家族への連絡、
あれやこれやと考えていると、小さなフラッシュバックが起きているのか、恐怖のようなものの存在に気づく。
思考が地元に近づいて行く度、何かが私の中で起きている。
仕事で上京した、という理由ではあるものの
どこかで私は現実から目を逸らして東京で生きているのではないかという罪悪感すら感じた。
何かを有耶無耶にしたままのような、解決しないといけない何かがあるような。
それはただ窓から入ってきた冷たいそれに急かされただけのものなのか。
有耶無耶にして、解決しないといけないものであったとしても、
それはもう手遅れだったり、今の私には手をつけられる状況ではなかったり、様子見を続けなければならないことだったり、そんなものたちのような気がしたけど、
実際何かはわからない。
故郷には、故郷の怖さがある。
「怖い」と言ったら語弊があるかもしれないけれど、
東京都はまた違う、生っぽい怖さ。
東京みたいに物陰に隠れることのできない、より動物感があって、より無垢で、温度がある怖さ。
それに対する、悔恨に近いのかもしれない。
畏怖も含まれているのかもしれない。
それでも、変わらないまま在り続けて私を受け入れてくれる景色があること、
その悔恨を思い出させてくれることすらも、喜ばしいことでもある。
帰省した日は、冬の冷たいそれを忘れさせる暖かい日だった。