【大江戸今昔めぐり】
電車の扉がが開くと、その扉ギリギリまで佇む人、人、そして人。
「乗れるかなー。乗りますよー。」の想いを全身で放出しては見たものの、
スマホという文明の利器に釘付けな彼らはこちらのことなんて見ようともしない。
人、人、そして人の空間に許可もなく無理矢理入ってしまった気持ちだ。
「すみません」のアイコンタクトすら拒否され、
社内の湿度も相まって更に居心地が悪くなる。
そんな帰宅ラッシュアワー。マスクの下で口を噤む。
友人に「大江戸今昔めぐり」というアプリを教えてもらい、
物理的な意味だけでなく、時間的にも「遠く」が恋しくなったときにこのアプリを開く。
写真で見てもらうとわかるように、
現代の地図と江戸時代の地図とをカーソル一つで見比べることができる、
お寺や神社など歴史好きな人はお散歩しながら歴史を学ぶことができる神アプリ。
そして時には「ここ海のど真ん中..」と苦笑いもできるアプリ。
地上へ出た私はバスを待ちながらこのアプリを開く。
すぐそこの神社は江戸時代にはすでに建立されていて(というかほとんどの神社、寺院は建立されていて)、目の前にあるやたら聳え立ってるよくわかんない物とか流れが多い大きな道路とかそんなものは無く、小姓組の敷地がやたら大きいけど今はそんな形跡はないし、
今はお洒落と言われているこの土地も、地名を見ればがっつり「村」。消えた河川。
夕方のこの空の色は、きっと今も江戸も然程変わっていない。
大気汚染できっと今の方が霞んで見えているだろう。
でも目の前を塞ぐあれもこれも無いとき、この「帰宅ラッシュアワー」時、
ここに立っていた400年前の人々はどんな気持ちでこの色を見ていたのだろう。
文明の力を片手に持ったまま空を探す、仰ぐ。
一息ついてバスの位置情報アプリを開く。
彼らからしたら私も含めて、この景色は異様だろう。