本有するもの、そして諦念
ジュースがどうしても飲みたくなりコンビニにいた私。元々揺れに敏感というのもあるが、直ぐに異変に気づいた。パックのジュースが不気味に揺れている。
周りに目を移すと、陳列されたお菓子も、お酒も、天井から吊るされた「ATMはこちら」の看板も小刻みに動いていた。しかし他のお客さん、店員さんも気付いていない様子で、それがまた私には不気味でたまらなかった。私の横では棚に陳列されたお酒がゆらゆらと波打っている。
これが初期微動でこのあと主要動がガツンときたら、私はブラック○ッカ塗れになって、倒れてきたブラック○ッカに押し潰されて、パニックの店内で大声で助けを呼ぶことになるやんけ、待って、私ブラック○ッカ飲んだことないけど、ブラック○ッカに恨み持たれるようなことしてないんだけど(たぶん)!何故ブラック○ッカなんだ!キ○ミヤには世話になったけど!待ってちゃうわ、だからと言ってキ○ミヤに殺されるのも嫌だったわ!謎!
そう思う間に揺れはおさまった。
耳に聞こえるほどの自分の鼓動を抑えながら、何故かジャスミンティーを手に取りレジに並んでいた。ブラック○ッカの襲来によりジュースは頭からすっぽり抜けていた。
揺れに気づいていない様子のお客さんや店員さんを責めるつもり到底ない。
でももしあの後揺れが強くなっていたら、と思うと、少しだけ、また世に絶望を覚えてしまった。
この街は、人、物、情報に塗れその隙間を縫うように人が生きている。
万が一。何物かに呑み込まれる危機感。ゼロでは無い可能性。
これらを未だに拭うことはできない。店内にいる人たちからしたら、そう考えながら生きている私が不気味なのかもしれない。
私の前にレジに並んだ青年は缶ビールを買って行った。
コンビニの外では彼女が待っていた。合流した二人は楽しそうに話しながら、私とは逆方向の街へ縫うように消えて行った。
絶望から、諦念に色が変わってきた。
とにかく朗らかに、元気で生きていてくれたらそれでいい。
ph Noa