ビハインド・ザ・シーン


1年前の夏。この撮影中、三浦春馬さんの訃報がLINEニュースに流れたことをよく覚えている。

1年前の夏といえば、変わり切ってしまったこの状況でどうやって仕事をしていくか皆が悩み堕ちていた頃。
発表されていたデータを見直してみたが、都内新規感染者数が一時的に数十人〜数百人になっていた時だ。
県外の撮影場所までは車移動。
車中は勿論マスク、窓は常に開けたままで走行。
人の少なさと酷暑から判断し、一時的にマスクを外している。(と念の為書いておく)

車のナンバープレートを見た地元の方からスタッフが声をかけられ嫌な顔をされた、というエピソードも忘れていない。

仕方がない。もしこの地に感染者が出たら、恐らく私たちのせいになる、という可能性は高かったから。

1年後の今、数字が10倍以上に膨れ上がる。
ウイルスに対し分かってきたことも、当たり前となった感染対策も増え、それと共に体感ではあるが仕事数も戻ってきた。
全体的な数は減ったのかな?詳しいことはわからないけれど、何度も書いた気がするが「篩にかけられた」感は否めない。

常に思う。
慣れることほど恐ろしいことはない。

ショックが大きく撮影中もその後もだいぶ引きずられた訃報のニュース。
確実に緩くなってきた撮影環境。
もっと遡れば、
波があり常に不安定な仕事。
夏に冬服を着て冬に夏服を着る生物の常軌を逸した職業。
聳えるビル群。
熱波を発するコンクリート。
スマホを気にする自分。

慣れてしまったら見えることも、感じることも、考えることも無くなっていくような気がして、私は「慣れ」がとても怖い。

フォトグラファーが何気なく撮ってくれたこの写真。
こんな状況だったけど、
めっちゃ暑かったね。
畳に布団敷いて寝たね。
虫取りしたね。
新種の虫を発見して捕獲したね。(研究者に贈与)
とれたての野菜たくさん食べたね。
バーベキューしたね。
バーベキュー中にナチュラルなゴキブリが飛んできたね。
休憩で川遊びしたね。
誰も見ていないからってその場で着替えようとしたら全力で止めてくれたよね。
ていうか直前にフォトグラファーが妊娠初期であることを知らされてめっちゃ焦ったね。
でも撮影は無事終えられたし、ジーンもオーストラリアで無事発刊されたし、その後フォトグラファーの赤ちゃんも無事生まれたし、よかった。

混沌する想いと状況と環境と人間が詰まったビハインド ザ シーン。
慣れないように、見れるように、感じられるように、考えられるように、これからもずっと持っていたい写真。

というか写真って本来そういうものだよね。