奥間
もう二度と来ることはないだろうと思っていた奥間にまさか仕事で来るとは思わず。
インスタを見返したらそれは8年前だった。
そんなに経つのか。
そういえば今は11月だし、
茶トラの野良猫は妙に懐いてくれるし、
ここのビーチは来たことがあるし、
何故こんなに偶然が重なってしまうのか。
現在の慣れによって薄れてしまっていた私の背負うべきものが、私を平手打ちして目を覚まさせたようだった。
現在に不満があるわけでは全く無い。
恋焦がれているわけでも全く無い。
ただそれに蓋をして生きればいいものを、私はどうしても蓋をすることもできないし無視もできない。
どうしてあんな結果になってしまったんだろうと、
あの時泊まったホテルを背に悔しさで涙が出そうになる。
時間を戻すこと、事実を変えることは勿論、現在の幸せを願うこともできない。
この理不尽を、どう自分に落とし込もうかと考え始めてもうすぐ丸4年。
「背負うべき」が「身体に溶け込む」ぐらいになればいいのに。
もう亡い姿を勝手に思い浮かべながら、勝手に見守られてる気がしながら、撮影が始まった。