完全に慣れてはいけない

ちまちまとホームページを作りながら、細かいカタカタという音に気づくと同時に目眩らしき揺れを感じる。

「ああ地震だ」
と思った矢先、揺れは体全体で感じる大きさとなる。
「関東近郊、千葉か茨城。やや大きめ。」
頭の片隅で発語した。

揺れがおさまり、Twitterの地震速報を開く。
当たり。
茨城県でマグニチュード4.6。

スマホのニュースにサラサラと目を通している限り、
各地大きな被害はなさそうで良かった。

でも、最近「東京の地震」に慣れてきてしまっている自分がいることに気づき、
なんとなく気分は良くはない。




愛知県の友人から「月と土星と木星が南西の空に見える!」と連絡が来る。

どうやら土星と木星が近づくのは400年ぶりだそうで、
メッセージと共に送られてきた写真も、明るい天体がくっきりと数個写っている。

ホームページ作りもうまく進んでいなかったので、
気分転換がてら日が暮れて間もない夕方の外に出る。

ちょうど帰宅ラッシュ時間で、
家のすぐそばの、道幅は広くないわりに交通量が多い道路は、
ひっきりなしに車やバス、バイク、トラックが行き交い、
全てのライトが目まぐるしく私を照らし、そして動く。

右折待ちの車を避けて歩道スレスレを勢いよく通り抜ける高級車。
そして車道だけではなく、
広くはないわりに混み合う歩道は自転車と歩行者がお互いに戸惑いながら行き交う。

信号がやっと変わり再び静かな住宅街に入ったけど、
南西の空に月たちは見ることができなかった。

時間的に東京ではまだ見れないのか、
私が見つけるのが下手なのか、
いや、その前に、マンションが多くて空が狭い。
残念だったが、それらに挟まれた細い道を再び歩いて帰った。




帰宅し、パソコンを開く。

何十回も見た作りかけのホームページが、
すっかり働くフリーランスと成った証拠のように映し出される。
「東京に慣れたくない」と想いながらも、慣れなければいけない私。
慣れてしまいつつある私。



「東京に、完全に慣れてしまってはいけない。」
見えない遠い未来をどこかに望みながら、作成を続ける。



ホームページも私の未来も、どうなるかは全くの未定。