武装 前編

水力エネルギーで動く発電機が、誤作動で水力がないのに発電機のみ動き続けている状態。

このままではバーストする。




去年の今頃は、事務所を退所する事を決め、その話し合いを進めていた時。

自分で決めたこととは言え、

泥波のような東京の街に放り出て、

身一つで動いていかねばならない恐怖、焦燥、不安は尋常ではなく、

スマホゲームに課金に課金を重ね現実逃避をしていた。

(課金していたことは本当は内緒)




退所と同時に課金は辞めたが、意識が課金から逸れた途端、

無意識に目には見えない鎧という鎧を何重にも着ていた。

そのことに一年経ってやっと気づく。




完全武装し続けた約一年、

先日の撮影で「身体は動くが、パワーがない」ことに気づく。

体が動くのはただ経験があるからだけで、肝心な中身が枯渇しいた。


気候の変化と、

度重なる著名人の訃報と、

言わずもがな恒常的な不安と、

気づけば退所からもう一年が経つのと、

パソコンに向かい黙々と自分を文字としてタイピングする中から削り出すような作業と、

全てのタイミングが重なったからかもしれない。




当たり前のことだから身体は勝手に動く。
が、そんな自分は見事に「泥波のような東京」に馴染んでしまった気がして、
通勤電車内の死んだ空気の一部になってしまった気がして、
私の仕事がただの「作業」になってしまっている気がして、
旦那氏に「少し充電していいですか」と言葉にした途端、
自分でも驚くほど涙がこぼれ止まらなくなった。



水がないのに動き続ける水力発電。
水力に例えたのは、水辺撮影の写真が好きだからかもしれない。
こんな状況でも仕事とリンクさせてしまう私は、
賢いのか、否、愚かなのか。



つくづく思う。
私は生きることが下手だ。