萎れても、尚

 

18年ほど前に流行った映画のように、

「誰か助けて」と道路の中心で叫びたいほど今日の私は神経から萎れていた。

仮に其処で泣き叫んだところでサラリーマンとOLで埋め尽くされたこの交差点で、優しく声をかけてくれる人はいるのだろうか、そしてその優しい声を私は素直に受け止められるのだろうか、寧ろ人の代わりにすぐそこにある交番から警察がやってきて不審者として連行されるのではないか。

この土地に似つかわしくない服装、髪型、サングラス、右手にマスク、左手に水。


考えていたらアホくさくなってきて、そのうち信号も青に変わって、赤坂駅までの道のりを進む。


そういえば家を出る前、視界に入った花瓶の花も首が項垂れていた。

まだ蕾のそれを開花させるべく、直射は当たらずとも日当たりの良い窓側に、水をこまめに変え立たせていたけれど、

私の淡い希望はこの異様な湿度に負けたよう。

綺麗なオレンジ色を見ることもなく、萎れ、項垂れていた。


息絶え絶えになりながらもなんとか帰還した私に残されたのは、足首の靴擦れ。

冷たいコーヒー、読みたい本。